美しき花は罪

ワインを一口飲むと、ヴィンテージものらしい深みのある味が口に広がっていく。その味を楽しみつつ、ラファエルはフランソワーズと話をする。

最初は互いの仕事のことや、休みが取れたらどこかに旅行に行きたい、というような話をしていたのだが、ふとフランソワーズの表情が固いものに変わった。空気がどこか重くなり、ラファエルは「フランソワーズ？」と黙り込んでしまった彼女に訊ねる。

「……ねえ」

フランソワーズは怒りを必死に抑えた声を出し、ラファエルを見つめる。その顔に先ほどのような表情は一切なく、恐怖を感じさせた。

「あなた、私以外に女を作っているでしょ？」

「……は？」

突然言われた言葉にラファエルは固まる。フランソワーズはもちろん、他の女性たちに何人もの人と関係があるとは言っていない。しかし、女性が他にもいるという痕跡は一切残さなかったはずだし、デートする場所も気を付けていた。

「な、何を言ってるんだフランソワーズ。俺が愛しているのは君だけだよ？」