美しき花は罪
真っ暗なラファエルの脳裏に、美しい物語が浮かぶ。ラファエルとシャネルがコンサートで偶然出会い、話をするうちに仲良くなって、キスやデートをする関係になっていくという劇のような恋の始まりと幸せな今の物語だ。

ラファエルがゆっくりと目を開けると、シャネルが楽しそうにピアノを弾いている。赤く染まった頬、その幸せな表情には、ピアノを心から愛しているのだということが伝わってくる。

「ねえ、俺のことも見てほしいな」

モヤモヤしてしまったラファエルは、頬をぷくりと膨らませながら言う。シャネルはピアノを弾く手を止め、恥ずかしそうな目をラファエルに向けた。

「ごめんなさい……。好きな人を見たいのに、緊張してなかなか見れないの……」

シャネルは恥ずかしがり屋で、大人しい女の子だ。そこが彼女の可愛いところであり、ラファエルの心を刺激する。

「フフッ、可愛いね」

ラファエルは微笑み、シャネルに近づく。そして彼女の美しい黒髪に触れた後、耳に指を滑らせた。
< 7 / 23 >

この作品をシェア

pagetop