夜の早送り
深夜に公園に来るようになったのは、1ヶ月ほど前の事だった。
お父さんは単身赴任で県外にいるので、一人っ子の私はお母さんと2人暮らしをしている。もともとそこまで私に干渉してくる親では無かったけれど、半年ほど前から、お母さんが家に帰ってこなくなった。
仕事が忙しくても、夜ご飯だけは毎日一緒に食べてくれていたのに。
ある日突然、ラップのされた作り置きのご飯の横に、『帰りは遅くなるから、温めて食べてね』というメモが添えられるようになった。
1週間その生活が続くと、メモが置かれなくなった。1ヶ月も経てば、作り置きのご飯すらなくなって、代わりにテーブルの上にはお札が1枚置かれるようになった。
もう半年、顔を見ていない。
過去に1度、お母さんが帰ってくるまで起きてみようと思ったことがあった。けれど、時間だけが進み、朝になってもお母さんが帰ってくる気配はなかった。
1人の夜が怖くて、いつしか私は眠れなくなった。
起きてることさえ怖くて苦しいのに、布団に入って目をつぶっても眠れなくて余計に苦しい。私しかいない家の静寂が寂しさを連れてくる。
少しでも早く朝を迎えたくて、ある日私は外に出た。家の周りを散歩がてらぐるぐると徘徊して、ふと公園に足を運んだのだ。
『よー、家出少女』
そしたら、そこにクラスメイトの瀬尾がいた。