夜の早送り
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瀬尾の家は、私の家のすぐ近くだった。
彼はお兄さんと2人で暮らしているらしい。今日は彼女の家に行っているからいないと、家に向かう途中で言われた。
両親がいないことについては詳しく聞かなかった。多分、私と同じか、もっと酷いかだと思ったから。
「星名、ベッド使っていーよ」
部屋に入ってすぐ、瀬尾が言った。
そうだった。私、瀬尾の家に寝に来たんだ。
どうしてあの時頷いてしまったんだろう。『あっためてあげてもいーよ』ってなんだ、それ。瀬尾と私はただのクラスメイトで、深夜の公園でダラダラしょうもない話をするだけの関係なのに。
なんで私、瀬尾の部屋にいるんだ。
「…や、私座ってでも寝れるからいい」
「座って寝れるやつは学校で寝れてるはずだろ。俺をなめんなよ?」
「偉そうに言うことじゃない…」
瀬尾のいうとおりだった。座ったままだとなんだか居心地が悪くて眠れない。
超真面目な生徒なわけじゃないのに、授業中に寝たことは今までの人生で1度もなかった。横になって、暖かい布団にくるまって、安心感がある時じゃないと眠れない。