とある企業の恋愛事情 -ある社長令嬢と家庭教師の場合-
ようやく本堂に話せると聖は上機嫌だった。
そんな聖を見て本堂も察しがついたのだろう。自分からその話題を振ってきた。
「よかったな、オメデトウ」
「え? 知っていたの?」
「お前のそのご機嫌な顔見りゃあわかる」
「バレちゃった。そうなの、約束通り一番とったのよ。さぁ、教えてちょうだい」
「そんなに聞きたいのか?」
「だって、不思議だから。疑問があるととことん調べるタイプなの」
聖がずい、と詰め寄る。
「さあ、教えてよ。どうして家庭教師になったの?」
本堂はしばらく表情を変えなかったが、たっぷりと間を開けて答えた。
「お前に近づきたかったからだ」
本堂の一言を聞いて、聖はしばらくその目を見つめた。嘘を言っているようには見えなかった。
その言葉にどんな意味があるかは知らないが、あるとしたら三通りだ。
よくいるのは藤宮というブランドが欲しい人間。藤宮に恨みを持つ人間。三つ目は、まだ出会ったことがない。
この男がどれに分類されるか、今判断することはできない。それよりも、一つ目と二つ目で自分ががっかりすることの方が怖かった。ようやく面白い人物と出会えたのに、解雇にはしたくない────。
聖はしばらく考え、結論を出した。
「あなたはいつも面白い答えを出してくれるのね」
「聞かねえのか?」
「たとえそれを聞いたとしても私は何もしないわ。自分の立場は自覚してるから」
「案外賢いんだな」
苦笑して、聖は机の上の成績表を屑篭にシュートした。
聞くことができなかった。本堂の答えは聞かなくても分かっていた。
自分を見つめるその目が、何を言っているのかその時に理解した。
それでも彼をそばに置きたいのは────自分を崩さないために必要だと判断したからだ。
そんな聖を見て本堂も察しがついたのだろう。自分からその話題を振ってきた。
「よかったな、オメデトウ」
「え? 知っていたの?」
「お前のそのご機嫌な顔見りゃあわかる」
「バレちゃった。そうなの、約束通り一番とったのよ。さぁ、教えてちょうだい」
「そんなに聞きたいのか?」
「だって、不思議だから。疑問があるととことん調べるタイプなの」
聖がずい、と詰め寄る。
「さあ、教えてよ。どうして家庭教師になったの?」
本堂はしばらく表情を変えなかったが、たっぷりと間を開けて答えた。
「お前に近づきたかったからだ」
本堂の一言を聞いて、聖はしばらくその目を見つめた。嘘を言っているようには見えなかった。
その言葉にどんな意味があるかは知らないが、あるとしたら三通りだ。
よくいるのは藤宮というブランドが欲しい人間。藤宮に恨みを持つ人間。三つ目は、まだ出会ったことがない。
この男がどれに分類されるか、今判断することはできない。それよりも、一つ目と二つ目で自分ががっかりすることの方が怖かった。ようやく面白い人物と出会えたのに、解雇にはしたくない────。
聖はしばらく考え、結論を出した。
「あなたはいつも面白い答えを出してくれるのね」
「聞かねえのか?」
「たとえそれを聞いたとしても私は何もしないわ。自分の立場は自覚してるから」
「案外賢いんだな」
苦笑して、聖は机の上の成績表を屑篭にシュートした。
聞くことができなかった。本堂の答えは聞かなくても分かっていた。
自分を見つめるその目が、何を言っているのかその時に理解した。
それでも彼をそばに置きたいのは────自分を崩さないために必要だと判断したからだ。