竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
旅立ち
その日は、春先にしては暖かい日だった。
カレンベルク邸にやってきた馬車は三台。
一台がアメリア、もう一台がギュンター子爵。子爵はこの件についての一切を取り仕切っていて、竜の城まで同行するのだという。最後の一台に、子爵の連れてきた使用人の男女と、沢山の荷物が積まれていた。アメリアの身の回りの世話は、この女性がしてくれるらしい。
アメリアを見送ったのは、荷物を運んできたラウラと母親だけだった。
ラウラは奥様がいるので、荷物を積むと遠慮して少し離れた所へ下がった。母のエリーゼは涙を流していたが、ついに母親らしい言葉を口にすることはなかった。
アメリアは複雑な気持ちだった。でも自分も、思い切って母に本心をぶつけたことはない。母親はこういう人なのだ、そう思ってそれ以上考えるのをやめた。
「お母様、お元気で」
馬車の窓から一言挨拶をすると同時に、馬車は走り出していた。
カレンベルク邸にやってきた馬車は三台。
一台がアメリア、もう一台がギュンター子爵。子爵はこの件についての一切を取り仕切っていて、竜の城まで同行するのだという。最後の一台に、子爵の連れてきた使用人の男女と、沢山の荷物が積まれていた。アメリアの身の回りの世話は、この女性がしてくれるらしい。
アメリアを見送ったのは、荷物を運んできたラウラと母親だけだった。
ラウラは奥様がいるので、荷物を積むと遠慮して少し離れた所へ下がった。母のエリーゼは涙を流していたが、ついに母親らしい言葉を口にすることはなかった。
アメリアは複雑な気持ちだった。でも自分も、思い切って母に本心をぶつけたことはない。母親はこういう人なのだ、そう思ってそれ以上考えるのをやめた。
「お母様、お元気で」
馬車の窓から一言挨拶をすると同時に、馬車は走り出していた。