竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
 夕食がすむと、アメリアはレオノーラに促されて湯浴みを済ませた。案内されたのは、寝室だとヴィルフリートが言っていた部屋。レオノーラはドアの前で言った。

「中でお待ちください。ヴィルフリート様は後からいらっしゃいますから」

 そして一瞬気遣うような笑みを浮かべると、ドアを開けた。中には灯りが用意されているようで明るい。
 一気に心細くなり、アメリアはレオノーラを振り返った。だが優しく微笑みながらも、レオノーラはそれ以上何も言う気はないようだった。
 仕方なくアメリアは、躊躇いながらも寝室へ足を踏み入れる。後ろでそっとドアが閉められた。

 中には長椅子と小さなテーブル、年代ものの大きな家具もいくつかあるようだ。
 そして部屋の中央に、大きな寝台が置かれている。見てはいけないものを見たような気になって、アメリアは慌てて目を逸らした。

 他には部屋の両側に、ひとつずつ別のドアがあった。片方は位置からして、さっきアメリアが身支度をした部屋と通じているようだった。ならばもう一方は……。

 視線をやると同時に、そのドアが開いた。アメリアはびくりと身を震わせる。

 ヴィルフリートがそこに立っていた。

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