竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
揺れる気持ち
翌朝アメリアが目を覚ますと、ヴィルフリートはいなかった。
昨夜は考えに耽ってしまい、なかなか寝つかれなかった。そのせいで、いつもより目覚めが遅くなってしまったらしい。おそらく眠っているアメリアを起こさぬように、ヴィルフリートはそっと出て行ったのだろう。
急いで身支度を済ませて髪を梳いていると、ノックの音がしてレオノーラが入ってきた。
「アメリア様、おはようございます。どこか具合でも?」
「おはようございます。遅くなってごめんなさい、ちょっと寝つかれなかっただけなんです」
レオノーラはほっとしたように微笑んだ。そのままアメリアの手から櫛をとって、綺麗に結い上げてくれる。
「ならばようございました。お食事はいつも通りに召し上がれますか?」
「はい。ありがとうございます」
そのまま連れ立って食堂へ向かう。ふとレオノーラが尋ねた。
「アメリア様は伯爵家のお嬢様にしては、かなり器用でいらっしゃいますね。たいがいのことをご自分でなさっていらっしゃる」
確かに貴族の娘の中には、箱入りに育てられ、リボンひとつでも侍女に結ばせる娘もいると聞く。アメリアはカレンベルク家を思い出して、淋しげに笑った。まさか、いつか自立を目指していたから……とは言えない。
「……なるべく自分でしたかったのです」
レオノーラも、義父カレンベルク伯爵の噂くらいは聞いていたのかもしれない。
「それは良いお心がけですわ」
そう言っただけで、それ以上を問おうとはしなかった。
昨夜は考えに耽ってしまい、なかなか寝つかれなかった。そのせいで、いつもより目覚めが遅くなってしまったらしい。おそらく眠っているアメリアを起こさぬように、ヴィルフリートはそっと出て行ったのだろう。
急いで身支度を済ませて髪を梳いていると、ノックの音がしてレオノーラが入ってきた。
「アメリア様、おはようございます。どこか具合でも?」
「おはようございます。遅くなってごめんなさい、ちょっと寝つかれなかっただけなんです」
レオノーラはほっとしたように微笑んだ。そのままアメリアの手から櫛をとって、綺麗に結い上げてくれる。
「ならばようございました。お食事はいつも通りに召し上がれますか?」
「はい。ありがとうございます」
そのまま連れ立って食堂へ向かう。ふとレオノーラが尋ねた。
「アメリア様は伯爵家のお嬢様にしては、かなり器用でいらっしゃいますね。たいがいのことをご自分でなさっていらっしゃる」
確かに貴族の娘の中には、箱入りに育てられ、リボンひとつでも侍女に結ばせる娘もいると聞く。アメリアはカレンベルク家を思い出して、淋しげに笑った。まさか、いつか自立を目指していたから……とは言えない。
「……なるべく自分でしたかったのです」
レオノーラも、義父カレンベルク伯爵の噂くらいは聞いていたのかもしれない。
「それは良いお心がけですわ」
そう言っただけで、それ以上を問おうとはしなかった。