竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
「おはよう、アメリア」
食堂へ入って行くと、いつもと変わらぬヴィルフリートが笑顔を向けてきた。ところが彼を見た瞬間に、アメリアは昨日の口づけを思い出してしまった。
「……アメリア?」
思わず俯いてしまったアメリアに、ヴィルフリートが不思議そうに声をかけた。アメリアは慌てて顔を上げ、挨拶をする。
「……おはようございます。ヴィルフリート様。すみません、今朝は遅くなりまして」
「いや、何ともないのならいいんだ」
向かいに座るヴィルフリートの顔を、アメリアは何故かまともに見られない。
ヴィルフリートは、最初からアメリアへの想いを隠そうとしていない。そもそもそれが竜の「番」というものだ。
それなのに自分ときたら、口づけひとつですっかり混乱し、そのうえ今度こそ抱かれるのかと、おかしいくらい緊張してしまった。名目上は既に夫婦だというのに、変に意識しすぎている自分が恥ずかしい。
いったいどうしたというのだろう……?
「アメリア?」
「えっ」
俯いて紅茶のカップを手に考え込んでいたアメリアが慌てて顔を上げると、ヴィルフリートが怪訝そうな顔をしていた。どうやら話しかけられていたことに、気付かずにいたらしい。
「……あ、すみません。今、何と?」
「ああ、うん。昨日の続きが読みたいなら、図書室で過ごそうかと聞いたんだが」
「図書室……? はい、――あ、いいえ!」
ぼんやりとおうむ返しに返事をしかけたアメリアは、途中ではっとして首を振った。
――図書室は、無理。また昨日みたいなことになったら、私……!
ヴィルフリートはますます不思議そうな顔をした。たまたまポットを持って入って来たレオノーラも、いつにないアメリアの様子に首をかしげている。
「なら、散歩にでも行こうか」
「――はい、ヴィルフリート様」
本当は、しばらく一人になりたかった。でもそんなことを言うわけにはいかない。自分はヴィルフリートの妻なのだから。
食堂へ入って行くと、いつもと変わらぬヴィルフリートが笑顔を向けてきた。ところが彼を見た瞬間に、アメリアは昨日の口づけを思い出してしまった。
「……アメリア?」
思わず俯いてしまったアメリアに、ヴィルフリートが不思議そうに声をかけた。アメリアは慌てて顔を上げ、挨拶をする。
「……おはようございます。ヴィルフリート様。すみません、今朝は遅くなりまして」
「いや、何ともないのならいいんだ」
向かいに座るヴィルフリートの顔を、アメリアは何故かまともに見られない。
ヴィルフリートは、最初からアメリアへの想いを隠そうとしていない。そもそもそれが竜の「番」というものだ。
それなのに自分ときたら、口づけひとつですっかり混乱し、そのうえ今度こそ抱かれるのかと、おかしいくらい緊張してしまった。名目上は既に夫婦だというのに、変に意識しすぎている自分が恥ずかしい。
いったいどうしたというのだろう……?
「アメリア?」
「えっ」
俯いて紅茶のカップを手に考え込んでいたアメリアが慌てて顔を上げると、ヴィルフリートが怪訝そうな顔をしていた。どうやら話しかけられていたことに、気付かずにいたらしい。
「……あ、すみません。今、何と?」
「ああ、うん。昨日の続きが読みたいなら、図書室で過ごそうかと聞いたんだが」
「図書室……? はい、――あ、いいえ!」
ぼんやりとおうむ返しに返事をしかけたアメリアは、途中ではっとして首を振った。
――図書室は、無理。また昨日みたいなことになったら、私……!
ヴィルフリートはますます不思議そうな顔をした。たまたまポットを持って入って来たレオノーラも、いつにないアメリアの様子に首をかしげている。
「なら、散歩にでも行こうか」
「――はい、ヴィルフリート様」
本当は、しばらく一人になりたかった。でもそんなことを言うわけにはいかない。自分はヴィルフリートの妻なのだから。