竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
ヴィルフリートが突然アメリアの肩を掴んだ。彼らしくない強い力に、アメリアの体が揺さぶられる。
「アメリア、それは……この私を恐れないということか。この身に竜の特徴を持つ、人ならざる身の私を?」
金の瞳が煌めき、アメリアをひたと見据えている。アメリアも目を逸らさずに頷いた。
「はい、ヴィルフリート様」
「こうして一緒にいても、大丈夫なのだな?」
「はい、ヴィルフリート様。怖くなど、ありません」
雨がさらに勢いを増し、冷たい風が吹き抜ける。だがこの時ばかりは二人とも、そこにまで気が回らなかった。肩を掴む指に、力がこもる。アメリアは痛みに軽く眉を寄せたが、今のヴィルフリートにはそれに気づく余裕がなかった。
「ならば、アメリア。私の妻に、なってくれるか」
「はい、ヴィルフリート様」
「ならば、私を。竜の私を――、受け入れてくれるのだな」
「あ……」
言外の意味を悟り、アメリアは頬を染めた。
「それで良いのか?」
答えようと口を開いたけれど、声が出せない。ヴィルフリートの目が真剣すぎて、まるで射抜かれてしまいそうだ。どうしよう、どうしたら……。
「頼む、答えてくれ。アメリ……!」
思い余って、アメリアはヴィルフリートの胸に飛び込んだ。
ヴィルフリートは驚きに一瞬身を強張らせた。自分からしたこととはいえ、アメリアは今さらながら羞恥に頬を染め、シャツに顔を埋める。その身体を、ゆっくりと回した腕が抱きしめた。
「ありがとう、アメリア。――私の番」
その声にも答えられず、アメリアはシャツを掴んだまま俯いていた。
雨は一向に止む気配を見せない。ヴィルフリートの上着を羽織らせて抱いていても、雨粒交じりの風がドレスをはためかせる。やがて腕の中の身体が細かく震え出すのを感じ、ヴィルフリートは決断した。
「アメリア、少しだけ我慢してくれ」
「えっ……」
上着を頭から被せなおし、アメリアを抱きかかえる。そしてやにわに雨の中を走り出した。
「アメリア、それは……この私を恐れないということか。この身に竜の特徴を持つ、人ならざる身の私を?」
金の瞳が煌めき、アメリアをひたと見据えている。アメリアも目を逸らさずに頷いた。
「はい、ヴィルフリート様」
「こうして一緒にいても、大丈夫なのだな?」
「はい、ヴィルフリート様。怖くなど、ありません」
雨がさらに勢いを増し、冷たい風が吹き抜ける。だがこの時ばかりは二人とも、そこにまで気が回らなかった。肩を掴む指に、力がこもる。アメリアは痛みに軽く眉を寄せたが、今のヴィルフリートにはそれに気づく余裕がなかった。
「ならば、アメリア。私の妻に、なってくれるか」
「はい、ヴィルフリート様」
「ならば、私を。竜の私を――、受け入れてくれるのだな」
「あ……」
言外の意味を悟り、アメリアは頬を染めた。
「それで良いのか?」
答えようと口を開いたけれど、声が出せない。ヴィルフリートの目が真剣すぎて、まるで射抜かれてしまいそうだ。どうしよう、どうしたら……。
「頼む、答えてくれ。アメリ……!」
思い余って、アメリアはヴィルフリートの胸に飛び込んだ。
ヴィルフリートは驚きに一瞬身を強張らせた。自分からしたこととはいえ、アメリアは今さらながら羞恥に頬を染め、シャツに顔を埋める。その身体を、ゆっくりと回した腕が抱きしめた。
「ありがとう、アメリア。――私の番」
その声にも答えられず、アメリアはシャツを掴んだまま俯いていた。
雨は一向に止む気配を見せない。ヴィルフリートの上着を羽織らせて抱いていても、雨粒交じりの風がドレスをはためかせる。やがて腕の中の身体が細かく震え出すのを感じ、ヴィルフリートは決断した。
「アメリア、少しだけ我慢してくれ」
「えっ……」
上着を頭から被せなおし、アメリアを抱きかかえる。そしてやにわに雨の中を走り出した。