竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
「アメリア」
ヴィルフリートは起き上がり、アメリアの肩を掴んだ。
「きゃっ」
急に引っぱられて驚いたものの、アメリアは楽しそうに笑ってヴィルフリートの腕を枕に寄り添った。そのまま空を仰ぐ。アメリアは日々生き生きと、明るく振る舞うようになっていた。
「わあ……、気持ちいい。ヴィル様、空に浮かんでいるみたいです」
いつだか閨で舌足らずに「ヴィル様」と呼ばれたのが気に入った。それ以来、はにかみながらもそう呼んでくれている。それに伴って、ほんの少しずつだが打ち解けた言葉遣いになっているのも嬉しかった。
少し眩しそうに空を見上げるアメリアの瞳に、青空に浮かぶ雲が映っている。
ぼんやりと横顔を眺めていたヴィルフリートは、急に身体を廻してアメリアに覆いかぶさった。
「ヴィル様……?」
「雲に嫉妬したなんて言ったら、君は笑うだろうな」
首を傾げるアメリアを見て、ヴィルフリートは苦笑した。アメリアの瞳に映るのは、雲ではなく自分でありたいだなんて……。全く、どうかしている。
「アメリア……」
ヴィルフリートは唇を寄せた。愛しい人の瞳に映っているのは、自分だけだ。
小さく戯れるように口づけては離す。ときおり顔を上げて微笑み、見つめ合い、どちらからともなくまた唇を寄せ……。陽射しの下で、ただお互いだけを感じている。これが「番」というものなのか。
――暖かくて、幸せで……、溶けてしまいそう。
潤んだ視界にアメリアが見たのは、せつなげに眉を寄せたヴィルフリート。金の髪が陽に透けて、輝いて見える。
――綺麗、ヴィル様。
そんな事を思ったのもほんのわずかの間。
しゅっと胸元のリボンを解かれ、アメリアは慌てた。
「え、ヴィル様。待って、まさか……!」
「済まない、アメリア。私は本当に重症だ。君が愛しくてたまらない――」
爽やかな風が、露わになった肌をなぶる。優しい春の日差しが、愛し合う二人に降り注いでいた。
ヴィルフリートは起き上がり、アメリアの肩を掴んだ。
「きゃっ」
急に引っぱられて驚いたものの、アメリアは楽しそうに笑ってヴィルフリートの腕を枕に寄り添った。そのまま空を仰ぐ。アメリアは日々生き生きと、明るく振る舞うようになっていた。
「わあ……、気持ちいい。ヴィル様、空に浮かんでいるみたいです」
いつだか閨で舌足らずに「ヴィル様」と呼ばれたのが気に入った。それ以来、はにかみながらもそう呼んでくれている。それに伴って、ほんの少しずつだが打ち解けた言葉遣いになっているのも嬉しかった。
少し眩しそうに空を見上げるアメリアの瞳に、青空に浮かぶ雲が映っている。
ぼんやりと横顔を眺めていたヴィルフリートは、急に身体を廻してアメリアに覆いかぶさった。
「ヴィル様……?」
「雲に嫉妬したなんて言ったら、君は笑うだろうな」
首を傾げるアメリアを見て、ヴィルフリートは苦笑した。アメリアの瞳に映るのは、雲ではなく自分でありたいだなんて……。全く、どうかしている。
「アメリア……」
ヴィルフリートは唇を寄せた。愛しい人の瞳に映っているのは、自分だけだ。
小さく戯れるように口づけては離す。ときおり顔を上げて微笑み、見つめ合い、どちらからともなくまた唇を寄せ……。陽射しの下で、ただお互いだけを感じている。これが「番」というものなのか。
――暖かくて、幸せで……、溶けてしまいそう。
潤んだ視界にアメリアが見たのは、せつなげに眉を寄せたヴィルフリート。金の髪が陽に透けて、輝いて見える。
――綺麗、ヴィル様。
そんな事を思ったのもほんのわずかの間。
しゅっと胸元のリボンを解かれ、アメリアは慌てた。
「え、ヴィル様。待って、まさか……!」
「済まない、アメリア。私は本当に重症だ。君が愛しくてたまらない――」
爽やかな風が、露わになった肌をなぶる。優しい春の日差しが、愛し合う二人に降り注いでいた。