竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
王宮の執務室では、ギュンター子爵が部下の報告を受けていた。その顔には、疲労が濃く浮き出ている。
「……分かった、ご苦労だった。交代して休むがいい」
部下が出て行くと、子爵は手元の書類を眺めて重い息を吐いた。
「フライベルク男爵、ゲイラー伯爵令嬢……、それにヨーゼフ殿下まで。これほどひどいとは……」
「竜の城」へも伝えたとおり、王都では流行り病が横行していた。
高熱が続き、次第に意識が混濁する。眠っている間にすうっと息を引き取ることが多く、これまであまり見たことのない病だった。二、三人にひとりが亡くなっているようだ。
医者たちはどこか遠い国から来たものだと判じたものの、さほど効果的な治療も薬も分かっていない。町の民たちはもちろんのこと、王宮内でも罹るものが増えていた。みな恐れおののいて出仕もそこそこに自宅へ引きこもっていたが、それでもそこここで発病し、死者が出ているらしい。
子爵は「竜」に関わる以外に、王家や貴族たちの戸籍に関わる一切を預かる役目を持っている。部下が持って来るのは、犠牲になった貴族たちの名簿だった。
「……分かった、ご苦労だった。交代して休むがいい」
部下が出て行くと、子爵は手元の書類を眺めて重い息を吐いた。
「フライベルク男爵、ゲイラー伯爵令嬢……、それにヨーゼフ殿下まで。これほどひどいとは……」
「竜の城」へも伝えたとおり、王都では流行り病が横行していた。
高熱が続き、次第に意識が混濁する。眠っている間にすうっと息を引き取ることが多く、これまであまり見たことのない病だった。二、三人にひとりが亡くなっているようだ。
医者たちはどこか遠い国から来たものだと判じたものの、さほど効果的な治療も薬も分かっていない。町の民たちはもちろんのこと、王宮内でも罹るものが増えていた。みな恐れおののいて出仕もそこそこに自宅へ引きこもっていたが、それでもそこここで発病し、死者が出ているらしい。
子爵は「竜」に関わる以外に、王家や貴族たちの戸籍に関わる一切を預かる役目を持っている。部下が持って来るのは、犠牲になった貴族たちの名簿だった。