竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
「どうかこのままヴィル様と、って思ったんです。そうしたら、つい……」
「ああ、私も同じ気持ちだ、アメリア」
肩越しに唇を合わせ、微笑みあった。そのままヴィルフリートにもたれて、アメリアはいつまでも遠くを眺めていた。
「……このまま脱がせてもいいが、風邪をひかせてしまうな」
「もう、ヴィル様ったら」
夏の日のことを思い出し、アメリアは頬を染めた。ヴィルフリートが笑う。
「なら、そろそろ帰ろう。あの雲の様子では、そろそろ風が強くなってくる。もしかしたらこの数日のうちに、最後の雪が降るかもしれないな」
手をとって歩き出そうとするヴィルフリートに、アメリアは首をかしげた。
「ヴィル様、お天気が分かるんですか?」
「本を読むか、外を見るかだったからね。風や雲の様子で、だいたい分かるよ。エクムントが言うには、やはり私は竜だから、勘が鋭いのだろうと」
「すごい……。外で働く人たちに、教えてあげられたらいいのに」
ヴィルフリートは笑った。
「そうか、役にたつことなのか。それは嬉しいな」
「嬉しい?」
外の話などをして余計なことを言ったと後悔していたアメリアは、ヴィルフリートが本当に嬉しそうなので驚いた。
「私はここで、ただ無為の時間を過ごしていると思っていた。君のように何かが作れるわけでもなく、エクムントや二コラのような役目があるわけでもない。ただ「竜の特徴」があるだけの、何の取柄も値打ちもないものだと」
「ヴィル様」
「いいんだ、アメリア」
ヴィルフリートは足を止めて向かい合う。言葉とは裏腹に、その顔には穏やかな笑みを浮かべていた。
「だから、嬉しいんだ。ここではそうではないけれど、私でも、役に立つ何かを持っているんだと分かったから。……ありがとう、アメリア」
「ヴィル様……。ヴィル様は、沢山本を読んでいらっしゃるから、たぶん人に教えることだってできます。いつも、私にいろいろ教えて下さるように」
「それは、教師というんだったね、王都では」
「そうです、先生です」
二人はにっこりと笑い合った。
「……行こうか」
「はい、先生」
ヴィルフリートが久々に、声をあげて笑った。
「ああ、私も同じ気持ちだ、アメリア」
肩越しに唇を合わせ、微笑みあった。そのままヴィルフリートにもたれて、アメリアはいつまでも遠くを眺めていた。
「……このまま脱がせてもいいが、風邪をひかせてしまうな」
「もう、ヴィル様ったら」
夏の日のことを思い出し、アメリアは頬を染めた。ヴィルフリートが笑う。
「なら、そろそろ帰ろう。あの雲の様子では、そろそろ風が強くなってくる。もしかしたらこの数日のうちに、最後の雪が降るかもしれないな」
手をとって歩き出そうとするヴィルフリートに、アメリアは首をかしげた。
「ヴィル様、お天気が分かるんですか?」
「本を読むか、外を見るかだったからね。風や雲の様子で、だいたい分かるよ。エクムントが言うには、やはり私は竜だから、勘が鋭いのだろうと」
「すごい……。外で働く人たちに、教えてあげられたらいいのに」
ヴィルフリートは笑った。
「そうか、役にたつことなのか。それは嬉しいな」
「嬉しい?」
外の話などをして余計なことを言ったと後悔していたアメリアは、ヴィルフリートが本当に嬉しそうなので驚いた。
「私はここで、ただ無為の時間を過ごしていると思っていた。君のように何かが作れるわけでもなく、エクムントや二コラのような役目があるわけでもない。ただ「竜の特徴」があるだけの、何の取柄も値打ちもないものだと」
「ヴィル様」
「いいんだ、アメリア」
ヴィルフリートは足を止めて向かい合う。言葉とは裏腹に、その顔には穏やかな笑みを浮かべていた。
「だから、嬉しいんだ。ここではそうではないけれど、私でも、役に立つ何かを持っているんだと分かったから。……ありがとう、アメリア」
「ヴィル様……。ヴィル様は、沢山本を読んでいらっしゃるから、たぶん人に教えることだってできます。いつも、私にいろいろ教えて下さるように」
「それは、教師というんだったね、王都では」
「そうです、先生です」
二人はにっこりと笑い合った。
「……行こうか」
「はい、先生」
ヴィルフリートが久々に、声をあげて笑った。