竜の末裔と生贄の花嫁〜辺境の城の恋人たち〜
エクムントからの知らせを受け取ったギュンター子爵は、重い息を吐きながら手紙を読み返していた。
彼が思ったよりも、事態は緊迫している。竜の城へ現れた男たちが誰の手の者かは分からないが、過去の自分の足取りをたどるのは、やはり難しくなかったようだ。始末するしかないのは理解できるが、いずれ王都へ戻らなければ次の災いの種となるだろう。もはや放置しておくことはできない。
と言って、今自分が動けば完全にヴィルフリートとの関わりを知らしめることになってしまう。どうにか後をつけられぬようにすることはできても、自分が王都を留守にしては状況が分からない。子爵はまた頭を抱えた。
三人の男が侵入した翌日、ヴィルフリートはアメリアに包み隠さず説明した。「竜の末裔」に関わる話も完全に共有したのだ。今さら秘密にしておいて守られたいアメリアではない。
アメリアは少し青ざめたが、それでも落ち着いて話を聞いた。
「……もし、また来たら……?」
それは当然の問いだった。ヴィルフリートももちろんこれで解決とは思っていない。
「エクムントたちは、最悪の場合はここを捨てて逃げろと言っている」
「どこへ、ですか」
ヴィルフリートは首を振った。
「残念だが、そこまでは分からない。その前に子爵と連絡がつけば良いのだが……」
「……私はヴィル様となら、どんなところでも生きて行けます。でも、できればこのままで……」
「そうだな。今から心配しても仕方ない。私たちはここで待つしかないんだ」
静かに頷くヴィルフリートに、アメリアはそっと寄り添った。
窓の外には早くも夏の花が咲き始めている。去年のように、屈託なく陽射しの下で語り合えないのが少し悲しい。それでも、ただ諦めて座っているのも嫌だ。
「ヴィル様、お庭へ行きましょう。遠くでなければ、前庭なら良いでしょう?」
少し驚いた顔をしたが、すぐにヴィルフリートはアメリアの意図を察してくれたようだった。
「ああ、いいね。そうしよう」
「今日は帽子が要りそうですね」
腕を組んで庭へ出てゆく二人を、レオノーラが静かに微笑んで見送った。
彼が思ったよりも、事態は緊迫している。竜の城へ現れた男たちが誰の手の者かは分からないが、過去の自分の足取りをたどるのは、やはり難しくなかったようだ。始末するしかないのは理解できるが、いずれ王都へ戻らなければ次の災いの種となるだろう。もはや放置しておくことはできない。
と言って、今自分が動けば完全にヴィルフリートとの関わりを知らしめることになってしまう。どうにか後をつけられぬようにすることはできても、自分が王都を留守にしては状況が分からない。子爵はまた頭を抱えた。
三人の男が侵入した翌日、ヴィルフリートはアメリアに包み隠さず説明した。「竜の末裔」に関わる話も完全に共有したのだ。今さら秘密にしておいて守られたいアメリアではない。
アメリアは少し青ざめたが、それでも落ち着いて話を聞いた。
「……もし、また来たら……?」
それは当然の問いだった。ヴィルフリートももちろんこれで解決とは思っていない。
「エクムントたちは、最悪の場合はここを捨てて逃げろと言っている」
「どこへ、ですか」
ヴィルフリートは首を振った。
「残念だが、そこまでは分からない。その前に子爵と連絡がつけば良いのだが……」
「……私はヴィル様となら、どんなところでも生きて行けます。でも、できればこのままで……」
「そうだな。今から心配しても仕方ない。私たちはここで待つしかないんだ」
静かに頷くヴィルフリートに、アメリアはそっと寄り添った。
窓の外には早くも夏の花が咲き始めている。去年のように、屈託なく陽射しの下で語り合えないのが少し悲しい。それでも、ただ諦めて座っているのも嫌だ。
「ヴィル様、お庭へ行きましょう。遠くでなければ、前庭なら良いでしょう?」
少し驚いた顔をしたが、すぐにヴィルフリートはアメリアの意図を察してくれたようだった。
「ああ、いいね。そうしよう」
「今日は帽子が要りそうですね」
腕を組んで庭へ出てゆく二人を、レオノーラが静かに微笑んで見送った。