私に恋を教えてください
柚葉の大きな瞳から、ぽろっと涙が溢れる。
柚葉は気の強い方ではない。

透悟が友人を見ると、友人はコクリと頷いた。透悟は生まれて初めて、取っ組み合いのケンカをした。大げんかだ。

「返せよっ! ゆーちゃんのだろ!」
「お前なんだよ!」
「ゆーちゃんに謝れっ!」

殴られようが血が出ようが、先生に引き剥がされるまで、透悟はそいつから離れなかった。

それ以降も中学でも高校でも柚葉はふわふわしていて感じがよくて、とても好かれることは間違いはなく。都度、それを裏でシメてきた透悟だ。

だいたいさー、弟にシメられたくらいで諦めるって、その程度の気持ちなんだよ!
そう思っていたから。

しかし、今回はいつもとは違う。
そもそも同級生の様な、年齢の近い人ではない可能性があるのだ。
柚葉の会社の様子は、透悟では分からないし。

時折アイスを口に運びながら、ぽやんとしている柚葉の様子は、まんざらでもないように見える。

そいつ……そいつ、一体何者なんだよ‼︎
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