私に恋を教えてください
最近は、いつもこんな風に振り回されている気がする。
大人の余裕を見せる須藤と。
その側でどうしていいか分からなくて、胸をつまらせている柚葉と。

急にこんな風に攫うようにして『ホテルを取った』と言ったり、柚葉が嫌がるようなことはしないと言ったり。

柚葉は両手で顔を覆う。

「柚葉?どうした?」
車を走らせていた須藤が驚いて、近くの公園の横に車を止めた。

「ズルい……駆琉さんはズルいです。いつも私ばっかりこんな風に胸が苦しくなったり、ジェットコースターみたいな気持ちにさせられているんです。ズルいわ、いつも大人みたいな顔をして、平然としているんだもの。」

「柚葉……」
柚葉は顔から手を離せない。

こんな顔、見られたくないです……!

カチャ……とシートベルトを外す音がした。
かさっとジャケットの擦れ音がして、ふわりとフレグランスの香りが近づく。

その動作のひとつひとつに、ここまで敏感になってしまうくらい全ての神経が、須藤に向かっているのだと、嫌でも柚葉は意識させられたのだ。
< 148 / 277 >

この作品をシェア

pagetop