私に恋を教えてください
「そうだな、買い換えるつもりはなかったんだけど、この車はディーラーで一目惚れして、つい買ってしまった」

「つい……?」
車は何百万とすると聞く。
つい、と衝動買いのように買えてしまうものなのだろうか?
柚葉は首を傾げた。

「いや、ついって言っても3日くらいは悩んだよ」
疑問が全部顔に出ている柚葉に駆琉は苦笑して、そう言った。

「その間もディーラーに足を運んでね。担当者は無理やり買わせるような人ではなかったけど、そんな俺にも根気よく付き合ってくれて」
毎日のようにディーラーに通いつめる駆琉が、柚葉には簡単に想像出来てしまって、つい笑ってしまう。

駆琉は楽しそうに話を続けた。
「その時『須藤さん、恋しているみたいです。そんな風に熱心に会いに来られるなんて、恋に落ちている人みたいですよ』と言われて、買う気になったんだ」

「あら……私のライバルなのね」
一瞬、駆琉はきょとっとして、それから笑い出す。
駆琉の恋人というワードに反応した柚葉なのだ。

「そうだなあ。だとしたら、正確には元カノかな?」
「なかなかに魅力的な元カノです」
柚葉は澄まして、そんな事を言う。
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