私に恋を教えてください
始まりは履歴書から
「絢音だったら、絶対プリンセスラインだろ。はー、もう取締役会がなかったら、絶対行ってたのにさぁ。今すぐでも、行きたいくらいだよ」

窓から外を見ながら、東条瑛(とうじょうえい)は先程から、婚約者へ甘い言葉を囁いている。

取締役室の面々は、先程から呆れたような表情でそれを見ているのだが、瑛はそんなことは、何処吹く風だ。

「写メ送れよ?絶対だからな。……うん。やっぱりさあ、今度一緒に行った時に決めよう。え?今日……?今日は今日でドレス姿、見たいから送れよ。……ん、じゃ、また今夜。うん、ありがとう。じゃあな……」

蕩けそうな顔で、電話を切った東条瑛が、寒―い顔で見ている部屋の中の人物達ににっこり笑う。

「何か?」
「今すぐでも行きたい?どの口が?」

そう言ったのは、従兄弟でありこの会社の取締役の1人でもある村上侑也(むらかみゆうや)だ。

株式会社エンジニアリング・コンサルティング・ファーム、通称ECFと呼ばれているこの会社はIT関連企業ということになる。
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