私に恋を教えてください

クリスは柚葉を椅子に座らせると、バックパックから一眼レフを取り出して、色んな角度から写真を撮り始めた。

それは、プロのカメラマンのようだ。
「すごく綺麗やけど、描いてるんかな……」
カメラを降ろしたクリスが、魅入られたように柚葉の着物を見ている。

柚葉は微笑んだ。
「お着物はそうです。京友禅と言って、白い布に少しづつ色を重ねて染めていく手法で描かれているんです」

柚葉はくるりと背中を見せる。
金糸や華やかな色で織り込まれた、綺麗な帯がこちらも見事だ。

「帯は西陣織です。こちらは、糸のほうに色が付いていて、織ることでこのように柄を作っていくんです。どちらもとても高い技術で作られています」

「帯もすばらしいな。帯自体もやけど、これ、こんな綺麗に折り紙みたいになってるのが、またすごいな」
「母が結んだんですよ。簡単なものから、このように複雑な結び方までいろいろありますが、解くと一本の布なんです。」

柚葉の説明を聞きながらその姿をカメラに収めていたクリスは、柚葉の足元に膝を付き柚葉の手を取った。

「可愛いだけじゃない。文化にも造詣が深くて、おもてなしの心も身についている。ほんまもんの大和撫子や。柚葉ちゃん、僕と結婚しませんか？」