私に恋を教えてください
真実
その日の帰り、須藤は電車に揺られながら、ふとあの時の衝動を思い返していた。

つい抱きしめそうだった。

あまりにもいたいけで、一生懸命な姿に胸を突かれたから。

それに地雷なんて、そんな目で見てしまっていたことにも、申し訳なさを感じた。
彼女は全く悪くないのに。

管理職としての自分を猛烈に反省する。
帰る前に柚葉が見せたぱあっと花が咲いたような笑顔に、久し振りに心が温かくなったような気がしたのだ。

もっと見たいな……。
そんな風に思った。
笑顔だけではなくて、いろんな表情が。

翌日、出社した須藤は、信頼出来る部下である春野玲奈(はるの れいな)を呼び出した。

春野は自分より2年程後に入った後輩で、今は主任として働いている。
自分も信頼しているし、部下からも信頼の厚い女性だ。

おそらく榊原のこともしっかり見てくれるだろうと思った。

春野を呼ぶと綺麗な仕草で歩いて、須藤の席まで来る。
役員からも好評な人であるし、先日までチームで常務を担当してもらっていたこともあり、指導者としては適任だと思われた。
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