私に恋を教えてください
もともとは瑛の父が立ち上げ、システム開発で成長した会社だ。
役員についてはほぼ、同族。

ありがたいことに、皆それなりに優秀なおかげで、会社の運営は上手くいっている。

しかも先日まで、皆の頭を悩ませていた瑛の浮名も、お見合いで出会った婚約者と、婚約した途端にピッタリと収まったのだ。

「文句あるか?婚約者だぞ」
(りつ)、瑛はどうしたんだ?最近付き合いも悪いしさあ。婚約とか……ブラフ(目くらまし)なんでしょ?」
つまらないのは、遊び相手でもあった村上侑也だった。

侑也はふわりとウェーブした茶色の髪の持ち主だ。
色素が薄めなので色白で、一瞬繊細そうな美少年にも見えるが、意外と背も高く中身は紛うことなく肉食系だ。

瑛の双子の弟である東条律(とうじょうりつ)は、ご機嫌な顔でスマホをいじっている、兄の瑛をちらりと見る。

「まあ、割とガチめのマジ……と言うか……」
「ガチめのマジ……」

律の方も、電話の相手であった、武田絢音(たけだあやね)の妹である琴音(ことね)と、婚約している立場であれば、瑛のことをひどく言える訳もない。
< 3 / 277 >

この作品をシェア

pagetop