【完結】打算まみれの恋


 あと、セルフでしないようタトゥーをしている人間は嫌いとも伝えた。「今度は俺フォンデュ」だとか「ホワイトデー、俺を具にしてさあ」などの彼の言葉を聞き嫌な予感がしたから、人間のチョコがけは厳しいことも伝えた。

 絶対しないと念書も書いてもらったし、本気度を伝えるために、きちんと法的拘束力のある形式だ。私の判子も押したし、名前も書いたから多分本気度は伝わっているはず。

 多分、大丈夫。

 ホワイトデーは何も起きないと滝永さん家のインターホンを鳴らすと、いつも三秒後にすぐ出てくるはずなのに、扉は一切開かれない。

 何となく嫌な予感がしてもう一度鳴らしていると、後ろから「はっはっ」と息を切らしたような、真夏のわんちゃんのような声がした。

 振り返ると、道の先から滝永さんがこちらに駆けてくるところだった。どこかで用事を済ませているのだろうか。そう考えている間に彼は目の前に立ち、私の左手を取った。
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