【完結】打算まみれの恋


「はい! 指輪! 今日から俺たち夫婦だからつけて!」
「……は?」

 薬指を見ると確かにリングがはめられている。

 滝永さんは理解不能なことを言うけど、なんとなく致命的な何かが起きている気がしてならない。嫌な予感がして彼をよく見ると、ポケットに四つ折りにされた紙が入っていた。さらに「婚姻届」などという文字が透け、慌てて奪い取る。

「何ですかこれは……」
「うん! 昨日ね! ズボン下ろしちゃいけないとか、緋奈さんと二十個くらい約束したから、今度は俺から約束してもらえると思って! それにね、へへ、もう俺らヤッて一ヶ月経ったじゃん? それに緋奈さん俺との約束に判子とか使うようになったしさぁ、 貰ってきたんだ! あのね、あと緋奈さんが名前書くだけにしたから! えへへ! 俺緋奈さんの字ずーっと真似してたから俺が書いて出しちゃっても良かったんだけど、書いてもらいたいなあと思って!」

 呆然としていた頭が、「書いて出しちゃっても良かった」などと不穏な単語ではっきりとしていく。
< 116 / 118 >

この作品をシェア

pagetop