【完結】打算まみれの恋


 目の前に、男の人がいる。滝永さん相手ですら憎しみが漏れ出そうで、気持ちを奮い立たせ頭を下げる。彼は「こっ、こちらこそ!」と聞きなじみのある声を発しながら私と揃えるみたいに頭を下げた。

「あっ、洋服のお金……! これ……!」

 懐から封筒を取り出して滝永さんに渡す。ブランド名が分からず大体の相場を調べて揃えたお金だ。しかし彼は首をぶんぶん振って受け取りを拒否してきた。

「駄目です! 電話までしてもらっていましたし……お礼です! 受け取ってください!」
「いえ、でも……」

「絶対受け取りません……! 本当に緋奈さんには感謝してるんです。なので、その感謝の気持ちです……全然足りないくらいですけど……あっ今日の分お金払いましょうか。今回付き合っていただいた分と、それと今までの分を……!」

 滝永さんは自分の鞄から財布を取り出そうとする。服をもらっておいてそのうえお金を取るなんて絶対やっちゃいけない。差し出した封筒を引っ込めると、彼も自分の鞄から手を引っ込めた。
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