【完結】打算まみれの恋
「今日の、服ありがとうございます」
「いえ、とてもよく似合っています……こちらこそ僕の服を着てくださって、ありがとうございます」
「こちらこそ……それで今日は、えっと……僕の親戚が店長を務めているレストランがあって……店員は親戚だけなんです。そこで話をしてもらいたいんですけど、大丈夫……です か?」
「はい。大丈夫ですよ」
「じゃあ、立ち話もなんですし行きましょうか」
滝永さんが歩き出す。後をついていくと、彼の背中がびくりと震えた。謝って離れると彼は「すみません……」と謝る。
少しだけ離れて滝永さんの後ろを歩けば、今まで彼がどういう状況に置かれていたのかはっきりとわかった。
行きかう女の人がみんな、滝永さんを見る。中には明らかに声をかけようとする女の人もいて、彼が大げさに避けると女の人は残念そうに去っていく。しかも、知り合いのような雰囲気はない。姉が男に近寄られるのと全く同じだ。そう考えて、ふとあることに気づく。
滝永さんって、もしかして姉と練習をすればよかったのでは……?