【完結】打算まみれの恋


 滝永さんの親戚の人は独特な雰囲気があるように見えた。髪色は明るく爽やかな笑顔は誰にでも好かれそうで底が見えない。だからこそ苦手なタイプではあるし、朗らかで柔らかい雰囲気のある晴先輩とはやや不釣り合いに見えた。テーブルに置かれたメニューを眺め、滝永さんと何を話すか考えていると、「あっあの!」と彼は意を決するような声を発した。

「ちょっと僕、挨拶とトイレに行ってきますね……」

 さっきから、何度も何度も自分の額をハンカチで拭っていると思っていたけど、今はパニック寸前といった様子で大分苦しそうだ。「どうぞ、ごゆっくり」とトイレへと促すと彼は足早に席を立つ。

 その後姿を見つめてから「ごゆっくり」は必要なかったな、なんて考えていると、私もトイレに行きたくなってきた。

 ここは個室だけど、開けた場所ではある。滝永さんの鞄はきっとここに残されたままだし、私がいなくなるのは危ない。でも彼の座席を確認してもそこには鞄が無かった。どうやらトイレに持って行ったらしい。
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