【完結】打算まみれの恋
いっそのことそう言ってしまいたいのに、正面に見えてきた扉が歪んでいく。
正しい長方形であるはずのそれがぐにゃりと曲がってよく見えない。目頭が熱くなって、呼吸が苦しい。ぶつかるように扉に向かってドアノブを手にとる。中学の時、担任にお願いされたときもこんな風に逃げていた。
でも足はあの時よりずっと重くて速く走れない。私は人ごみの中に逃げ込むように、ただただ走って逃げていった。
飛び乗る様に電車に乗った私は、地元の駅で降りた。人気のない住宅街を選んでとぼとぼと歩き、水道で目を冷やすため公園を目指す。
このまま家に帰り私の目が腫れているのを見たら、姉は報復しに行く。誰にされたか言わなければ女子供関係なく私の知人を一人一人殴っていれば犯人に辿り着くという理論で人を襲うだろう。
公園に辿り着くと、私以外誰もいない状況だった。奥には公衆トイレも見える。目を冷やしに来たはずなのに、へたりこむようにベンチに座ってしまった。空には黒々とした鈍色の雲が広がっている。まだお昼過ぎくらいなのにこんなに人がいないのは、きっと天気が悪いからだろう。