【完結】打算まみれの恋
「あれ」
声のする方向に目を向けると、中学の同級生の顔があった。サークルか何かの帰りなのかジャージで大きなスポーツバッグを下げている。
「松戸先輩の妹さんだよね?」
同じクラスの人間だったはずなのに、口から出てくるのは「松戸さんの妹」だ。笑える。自分の価値なんてはっきりと分かっている。家族以外、全員私は「松戸さんの妹」なのだ。
「うわ、久しぶりじゃん。元気だった?」
男は馴れ馴れしく話しかけ隣に座ってくる。私の靴箱に姉宛てのプレゼントをぎちぎちに詰めておいて、プレゼントを受け取ってもらえなかったのは箱がぐしゃぐしゃになったからだと私を糾弾したことなんて、すっかり忘れているのだろう。
「そういえばお姉さん元気? 今度医者の映画やるんだよね。実は俺の知り合いに医者がいてさ、役に立てないかなって思ってて」