【完結】打算まみれの恋

「お、俺……ごめんなさい、嫌だ、嫌わないでください。何でもします。何でもなります。俺頑張りますから、捨てないで……!」

「……もう全部話聞いてたんで、そういう喋り方じゃなくていいですよ」

 この期に及んで、まだ取り繕おうとしているのか。そう感じると心の奥底から急激に冷えていく。滝永さんは手を震わせ、握りしめることを繰り返しながら私の前に到達した。

「もう、私に近づかないでください。顔も見たくないです」

 そう言って、私は這いつくばる滝永さんを横切ろうとした。その瞬間、彼は顔を真っ青にして「いやだ、やだ」と小刻みに震え私の足元に縋りついてきて、私は転びそうになり立ち止まる。

「やだ。やだやだやだ。嫌わないで、嫌わないでください。やだ。ごめんなさい。嘘ついてごめんなさい。俺もう嘘つかない。やだ、ごめんなさい」

 滝永さんはみっともなく泣き出した。そんなに姉が好きなのなら正しく姉にアタックしていけば良かったのだ。私なんか構わずに。でも、中学の時あれだけひどい目に合ったのに、こんな人に騙される私も私だ。なんて情けない。惨めだ。振り払おうとすると「やだっ」と絶叫された。
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