【完結】打算まみれの恋

「それまで、心なんてないみたいにぐって黙って、俺に対しても敵意むき出しって感じだったのに、家族に対して、すごく柔らかく笑ってて、どうしても笑顔が見たくて、好きで、好きでって思って、でも調べたら緋奈さん男嫌いって聞いて、だからどうしようか考えて……、嘘つきました。ごめんなさい。この手帳も、ちゃんと捨てる……。緋奈さんが気持ち悪いって思うなら、ちゃんと捨てるから、だから嫌わないで。いくらでも罰は受けるからぁあ」

 この人が好きなのは、私なのか。

 私を騙して、姉に近づこうとする最悪な人種だと誤解してしまったけれど、そういう考えは、持っていないようだ。いやでも、いい人でもないような……。人を騙して人には近づいているし、というかむしろ、かなり危ない人のような……。

「あ、あ、俺の言葉、信じられないか! あ! い、今あそこの車に飛び込んで、ちゃんと罰を受ける気があること証明してくる!」
「待ってください、それは駄目です」
「え、ええ……じゃあどうしよう、どうすれば……あっ、靴舐めようか? 靴! ちゃんと靴の底舐める!」
「それも結構です……。というか私は、滝永さんがてっきり姉目当てで私に近づいたのだとばかり……」
「へっ?」

 滝永さんは、目に見えて狼狽えた。そして青かった顔色を、さらに青く……もはや白くなるほどに変えていく。
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