【完結】打算まみれの恋


「あれ、じゃあ俺の気持ちわかったって、俺が、お姉さん目当てで近づいてきたって、思っての言葉……?」
「はい」
「え、え! 本当!? 俺が、女慣れしてないふりして緋奈さんにプロポーズ申し込むとか、緋奈さんの両親にさりげなく会って外堀埋めて見合い出来るようにするとか、そういうこと聞いてなかったの!?」
「今聞きましたけど……」
「えええええ」

 滝永さんは、絶望したような表情をして項垂れる。というかプロポーズって何。両親にさりげなく会うとかなに? 今まで打算にまみれて私に近づく人間を沢山見てきたけど、ここまで打算と下心で動く人間は初めてだ。完全に発想が人間のそれと次元が違う。

「ば、ばれちゃったなら、言っちゃうけど……お、俺、俺、緋奈さん好きなんだ……結婚して……」
「いやその前に付き合ってないですよね」
「じゃあ付き合ってよ!」
「それは……まだ、出会ったばかりなので……」

 滝永さんを宥めるように言ってから、自分の言葉の意味に気づく。まだ、出会ったばかり。さっきまで私はこの人を最悪な人間だと考えていたけれど、もう今私は許そうと、してる……?
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