【完結】打算まみれの恋
演じていたはずの女慣れしてない滝永が、本物の滝永……俺になりつつある。あの子を前にすると言葉が本当に出なくなる。その割に汗ばかり吹き出す。
「なあ、今日決めるんだろ? 何その汗。今からそんなんでどうすんの? さんざん追いかけまわしてたんだろ?」
「いやもうマジで生緋奈さんヤバいの、マジどうしよう」
「お前座った椅子弁償しろよ」
「……トイレ貸してくんない?」
「汚えな。ここ出て1キロくらいのところに公衆トイレあるからそこ行け」
「この店のトイレ汚いの?」
「汚ねえのはお前だよ。お前の雑菌が浮遊してトイレの壁貫通して店に広がって晴ちゃんに触れたらと思うだけでゾッとするわ」
「ふざけてる場合じゃないから、マジで場所教えて。本当に今日いちばん大事な日だから。今までこつこつこつこつ築き上げてきた信頼関係が崩れるから、お前の店事故物件にしてやろうか?」
本当にどうしよう。今まで電話をしている限り、俺に対して嫌な印象を持ってはいないはずだ。でも今日好きですなんて言って、そんなつもりじゃなかったと思われて嫌われたら終わる。本当に生きていけない。駄目だ死にたくなってきた。