【完結】打算まみれの恋
頭を押さえていると、がたんと物音がした。
目を向ければ部屋の入り口付近に緋奈さんが呆然と立っている。その表情はやがて嫌悪に染まり彼女は一瞬にして踵を返した。
「緋奈さん!?」
去りゆく緋奈さんを慌てて追いかける。
今、彼女は俺を嫌悪した目で見てきた。嫌われた。話を聞かれた。どこまで聞かれた? いや、どこまで聞かれたかなんて関係ない。俺の前から去ろうとしていることがすべてを物語っている。
猛烈に頭が痛くなって死にたくなった。頭の中がぐちゃぐちゃになって耳鳴りがするのに、他の音は世界から消えている。
嫌だ。緋奈さんを失いたくない。誰にも奪われたくない。俺だけを見ていてほしい。手に入れたい。
今までずっと、ずっとずっと手紙だけで我慢してきたのに。やっと会えたのに。