【完結】打算まみれの恋


「緋奈さんにもっと好きになってもらいたいからね」
「え……」
「俺の特技だし。一回ヤッたらきっと俺の事もっと好きになって絶対離れてかなくなるから、俺はしたい」

 滝永さんがしゅんとした顔で視線を落とした。もっと性的なことを前面に押し出した理由とばかり思っていたけど、そんな風に思っていたんだ。

「それに緋奈さんが誰とでも寝るクソビッチなら俺とヤらないの特別感あるけど、緋奈さん誰とでもヤらないから、ほかの奴と一緒なんじゃないかって不安がある」

 この人は、とんでもない遊び人のクズだったと聞く。

 お金を貰って最低限顔と体がいい感じなら抱いていたとか、落とす賭けをして遊んでいたとか。

 正直そういうことしてそうだなと感じた瞬間はあった。それと同時に私のことが好きという証明に自分の貯金通帳の番号を絶叫され、信頼に似た疲れを覚えることはしばしばある。

「……今まで、男の人とどうこうなる未来なんて想像出来なかったですけど、滝永さんとは考えてますよ」
「緋奈さん……」
「今度から、不安にならないようちゃんと言葉でお伝えしていこうと思いますので、どうか早まらないでください。その、性的な関係に進むことも考えてはいますので。ちょっと、勇気が出ないだけで」

 ちらっと滝永さんを横目に見る。そして呆然とした。
< 84 / 118 >

この作品をシェア

pagetop