【完結】打算まみれの恋
正直なところ、私はバレンタインデーにいい思い出がない。逆チョコなどという文化のせいで、姉にチョコレートを贈る者が後を絶たずプレゼントの代行を頼まれたり、私の机や靴箱、ロッカー、鞄に姉宛てのチョコが詰められ、私の荷物を駄目にされることが毎年の恒例行事だったからだ。
「あの、誕生日は家族と過ごしたいので、会うのはバレンタインだけでお願いできませんか……?」
おそるおそる滝永さんの顔をうかがうと、彼は目を瞬き捨て犬のような顔をした。私は見ていられなくなり、視線を落とす。
毎年、ほぼ災害レベルの事象に巻き込まれた私の心を癒すのが、翌日に行われる家族との誕生日会だ。私だけじゃなく、「松戸緋奈の友達の彼氏になれば、間接的に松戸円に近付ける」と考える馬鹿な人間が多くて皆離れていった。
そういうことが何度もあって、良くしてもらっている晴先輩のことも、完全に信用しているかといえばそうとは言えない。