【完結】打算まみれの恋

◆◆◆


 いつどんなタイミングで取り乱すか分からない滝永さんと、常時加温されるフォンデュ機の相性は最悪では。

 そう思ったけれど、滝永さんはフォンデュ機が火傷と隣り合わせであることや、包丁で指が切れることはわかっていたらしい。バレンタインデー当日、刃物を扱っているときもチョコを溶かすときも取り乱すことなく、彼は普通に楽しそうにしていた。

「そろそろお腹いっぱい?」
「そうですね……」

 少し微睡みながらダイニングテーブルを見渡す。フォンデュパーティーが始まるまではたくさんのお皿が並び、フルーツや小さなスポンジケーキ、マシュマロがあったけど、今はところどころお皿の上に余ったイチゴが転がっていたり、つまめないほど小さなスポンジのかけらが残っているだけだ。

「俺、ちょっとトイレ行ってこよっかな」
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