【完結】打算まみれの恋

 滝永さんが伸びをしながら席を立った。なんとなく目で追っていると、ぽろりと彼のポケットからサインペンが落ちる。拾い上げると彼は「アッゴメンネ!」と何かを誤魔化す声色でこちらを見た。

「ジャッ! イッテクルカラァ!」

 そそくさと表現するにふさわしい様子で滝永さんが部屋を出ていった。一瞬トイレに落書きでもされたらどうしようと思ったけど、トイレまで追うわけにはいかない。

 この間、何の気なしにトイレに行ったら、「おっぱい触らしてくんないならせめておしっこ見せて」と訳の分からない理由で追われた。

 このままついて行けば、彼に「この間緋奈さんもトイレついてきたじゃん!」と今後の異常行動の口実を与えてしまう。

「緋奈さんただいま!」

 滝永さんがばんっと勢いよく扉を開いた。トイレまで本当に往復してきたのか疑ってしまうくらいの速さだ。不思議に思っていると、彼は突然自分のズボンを下着ごとずりおろした。
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