【完結】打算まみれの恋


「緋奈さんの名前書いてきたんだよ! ちゃんと油性ペンで書いたの! これで俺がもう誰とも遊ばない、緋奈さんが本命って信じてくれるよね!」

 満面の笑みを浮かべられ視線を落とすと、確かにペンで何かが書かれた滝永さんのそれがあった。たくさん名前を書いているのか、お経みたいになっている。

「な、なんでこんなこと……」
「だってこの間緋奈さんと出歩いてたときバカ女に邪魔されたでしょ? 俺緋奈さんと会うまで普通ブスデブ以外は抱いてたからさぁ、俺に抱かれただけで緋奈さんにマウント取ってくる奴いたらムカつくじゃん? 本当はタトゥーにしたかったんだけど店の人に絶対ダメって言われて……」

 とても迷惑そうに言っているけど、私は心の底からお店の人に感謝した。これから先、病気になったりしてそこに近い部分の手術とかあるかもしれないのに、おびただしい量の名前を書くなんて狂っている。

「店の奴ちょームカつくんだよ。そういう奴に限って絶対別れるとか言ってきてさぁ。しかもこんなとこに名前書けなんて言ってくる女クソメンヘラで正気じゃないとか言ってきて、俺がめっちゃアタックした話ししたらストーカーの通報はしないでおいてやるから出ていけって言われたー!」

 全然ひどくない。今度謝罪に行きたい。心の底から私は今そのタトゥーのお店の人に感謝してる。本当に、心から。
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