【完結】打算まみれの恋

 考えられる原因は一つしかない。私はスマホですぐさま救急車に電話をかけた。正直原因について説明したくないけど、緊急を要する。

『こちら災害救急情報センターです。火災ですか、救急ですか?』

 幸い電話はすぐにかかり、私は原因と状況を説明した。近くの救急車センターから救急車が来るそうで、私はスマホの通話ボタンを切る。

「滝永さん大丈夫ですか」
「病院行きたくない……緋奈さんへのアピールポイントが、う、失われてしまう……やだぁ……切られて緋奈さんと他人になっちゃうのやだぁ……まだ緋奈さんに俺の良さ知ってもらってないのにぃ……」

 とうとう自分の股間を押さえ、うつ伏せになりながら滝永さんが泣き出した。心配の気持ちは確かにあるし、起き上がれない状態なのだから危険ということはわかる。でも返事をする気になれなかった。

「取れたらどうしよう」
「取れないんじゃないですかね……」
「せっかく緋奈さんに好きになってもらえるはずなのに。絶対緋奈さん俺のこと好きになってくれるのに」
「……それなんですけど、滝永さんは他にも長所ありますよね」

 救急車が来るまでだいたい十五分くらいと聞いた。下手に大丈夫だと繰り返すより滝永さんを落ち着かせよう。大量出血の際は相手を落ち着かせるべきだと何かで見たし、興奮させておくよりはましだろう。
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