大人になってもまた君と
「とりあえず、酔っ払いは水を飲め。二日酔いになったら俺が面倒見なきゃいけなくなるだろーが」
冷蔵庫から水のペットボトルを1本取り出した冷え冷えのペットボトルを、照れ隠しのためか明後日の方向を見ながら私のほっぺたへ押し付ける。
あんまり力が入らなくてうまく蓋を開けられないでいると、溜息をつきながらも代わりに開けてくれる彼はやっぱり、口は悪くもやることは甘い。
彼の優しさをありがたく、身体に水と共に流し込むこととする。
それにしても……
「私の体調が悪くなったら面倒を見てくれるっていうのは、けんとの中では確定事項なんだね〜」
それもまた私の胸をきゅんと甘く締め付ける。と、同時に、にへらっと力の抜けた笑いが出た。
こんなの、頬の緩みを抑えられる方が変だもん。
私の言葉を聞いた健斗は図星だけども認めたくないらしく、ムッと押し黙って、十数秒経った頃にふっと鼻で笑ったかと思うと、口を開いた。
「なぁ、いつまでも俺が大人しくしてると思うなよ。……はるちゃん?」
こ、これはまずい。非常にまずい。
なにがまずいかって、急に声のトーンが上がって機嫌が良くなったことと、私のことを"はるちゃん"と呼んだこと。
普段は私のことを"お前"としか呼ばないのに、名前で呼んできたということは間違いなくこれはアレだ。
……攻めの姿勢だ。
"攻め"がただの小学生じみた意地悪だったなら、私もこんなに焦ることはない。
だけど、彼の攻めモードは。
……攻撃力がとても高いのだ。
主に、私の心臓への。