大人になってもまた君と
グラスが鳴ってから早2時間。
普段からあまり飲み物を飲まない私は、他の人たちが余裕をぶっこいている中、限界に来ていた。
「ん、もう、飲めない……」
当分、食べ物も飲み物もいらないや。
明日の朝と昼はご飯食べないかなぁ。
……って、あれ?なんでここに健斗がいるの?いつ来たんだろう?
それとも、飲みすぎて幻でも見てるの?
「お、まえ……!なんつー顔してっ!!」
こっちを見つめる目の中には驚きと怒りを混ぜた色が浮かんでいて、彼は両手で挟んだ私の顔をぐいっと上に持ち上げた。
んーもうっ!いたい!
いきなり現れたかと思えば、なんてことをするの!
ほんっと強引な男なんだから!
……でも、健斗の手は私のほっぺたよりぬるくて気持ちいい……。
もうちょっとこのままでいて欲しいなぁ。
さっきまで私に触ってきてた無礼な手とは大違い。
「なぁ、こいつに触ってたよな?見えてたんだけど」
「ちょっとだけ、ね?……あははっ!ごめんってば」
私を挟んで反対側に座っている男の子を睨みつける健斗は鬼の形相をしている。
すっかり酔っ払ってしまっている私の脳みそでは、健斗が怒っているのはわかるけど、その理由まではわからない。
そもそも、考えようとしていない。
「ここが店の中で良かったな?外だったら間違いなく殴ってたぞ」
そう低く噛み付く彼は、今まで私の知る限り付き合いの中で最も怒っている。
それは男子の目から見ても震え上がるものらしく、男の子は素早く私と距離をとった。
「……こっわ。彼女さん、喜んでお返しします」
「当たり前だ」
「……こんなに愛されてるのになんでこんなところに来ちゃうかな」
やっとお話終わった……?
じゃあ私はもう喋ってもいい?
おねだり、してもいい?
「もっと、触って……?」
「……は?」
「あつい〜。もっと、つめたいの、ちょうだい」
「はぁ……ほんっとふざけんな。なんだこの可愛い生き物……」
「う、ん……?」
眠いなぁ……。瞼が、おもい。
視界もぼやぼやする……。