大人になってもまた君と
「─────もういい。黙ってお仕置き受けてろ」
そう言ってから幾度となく降ってくる唇は、高校の卒業式の日に交わしたような触れるだけのお子様のキスではなくて、食べられてしまうんじゃないかと錯覚するくらい、深くて激しいもの。
激しく乱れているであろう彼の心を落ち着かせるためにも、私は必死にそれに答える。
しばらくして息も絶え絶えになった頃、怒りが小さくなっていったのか、ようやくお仕置きという名のキスの嵐から解放された。
苦しかったはずなのに、離れてしまった今は少し、名残惜しさを感じる。
「だいたい、そんなに頬を赤く染めて、潤んだ目でじっと相手を見つめて、舌足らずな喋り方をしたら好きにならない男なんているはずがないだろ。……ただでさえお前は可愛いんだから」
「んっ。ん……?なにか、いった?」
「なんでもねーよ。……ったく、他の男に触らせやがって。こことか、ここ、とか。触られてんの見えてたからな」
ここ、と言いながら頬や頭をなぞる手は優しくて、やっぱり安心出来る。
お説教中だというのに眠さが増していって、瞼が重力に逆らえない。
だけど、健斗の次の物騒な言葉でパチッと一瞬目が冴えた。
「店の中だから遠慮したけど、一発殴っとくべきだった」
「それは、だめ」
「あーもう、うるせーうるせー。あいつの味方してんじゃねぇ。俺は今、燃え上がりやすくなってんの。火に油を注ぐのはやめろ。はぁ……こんな余裕ねぇとこなんか見せたくねーのに」