大人になってもまた君と
くしゃっと、ワックスで軽く整えている髪をかく姿に焦りと恥じらいが垣間見えて、愛らしさを覚える。
本当に、嫉妬してるんだ……。
俺様でドSで自信満々の彼が余裕ないだなんて、珍しいどころか明日は雪とは言わず槍や隕石なんかが降ってきそう。
「んふふ、可愛いねぇー」
「……舐めてんのか」
「可愛いって言われるの、きらい?」
「嫌いっつーか、お前に言われてもっつーか……」
「ねぇ、けんと。私が好きなのはけんとだけだよ……?」
あらま、さりげなくフォローしてみたら、怖い顔のまま固まっちゃった。
どうして固まってるの?
ほんとのことだからびっくりするようなことなんてないはずなのにね。
「何事にも真剣に取り組むところでしょー。人を手のひらの上でころころ転がしちゃうところと、口は悪いくせに行動は優しいところ〜。……あとは、意外と嫉妬しちゃうところ!ぜーんぶ、好きだよ?」
こんなに好きじゃ、ダメ……?
他の人が嫌いだって言うところも、私からすれば好きなところの一つなの。
いいところも悪いところも。
全部ひっくるめて、好き。
他の男の人を見る余裕なんてないよ。
「っ!不意打ちは卑怯だろっ……!」
「どうようしてるの?可愛いねぇ」
「あん?可愛いって言われて喜ぶ男はいねぇって覚えとけよ。かっこいいって言われる方が嬉しいに決まってんだろーが」
「けんとはいつもかっこいいよ?昔から、ずっと思ってる」