とある企業の恋愛事情 -受付嬢と清掃員の場合-
幸い、チケットは取っていなかったので映画館に着いてから二人で選ぶことにした。
見たい映画は元々決めていなかった。美帆は基本的に何を見ても楽しめるので、滝川に合わせるつもりでいた。だから相手が変わっても困ることはない。
「私はなんでもいいですよ。津川さんの好きなものにしてください」
チケット販売機の前に立って、どれにしようかと話し合う。
「なんでもって、ホラーとかは嫌やろ?」
「ホラーでもいいですよ。私なんでもイケる方なので」
そう言われて、津川はさらに迷っているようだった。
この時間帯だと見れる映画はいくつかある。サスペンスの洋画か、子供向けのアニメか、動物系の感動モノか、邦画の恋愛モノ、ホラー。津川はアニメや恋愛は選ばないだろう。子供向けのアニメも見なさそうだ。動物も好きではなさそうだし、無難なサスペンスにすると思った。
「分かった。じゃあこれにしよ」
津川が指差したのは動物の映画だ。まさかそれを選ぶとは思わず、美帆は二度見した。
「えっこれ見るんですか」
「これやったら杉野サンも見れるやろ」
どうやら津川はいろいろ考えてくれたらしい。女性だからサスペンスは見ないと思ったのだろう。かといって恋人同士でもないのに恋愛ものを見るのは変だ。
津川と一緒に観る映画が動物系なんて、想像していなかった。だがあまり時間をかけらもいられない。美帆はそれにすることにした。
「津川さん、何か食べます?」
上映時間は二十分ほど後だった。待ってもいいが、小腹も空いているし何か買いたい。
「せやな。腹減ってるし」
「チケット代出してもらったので、こっちは私が持ちます」
「別に気にせんでええよ。大した額ちゃうし」
「そういうわけにはいきませんから。ほら、なんでも選んでください」
津川はなんだか居心地悪そうだ。それもそうかもしれない。津川は御曹司だから、人に奢られることなんてそうないだろう。そう思うと、なんとなくいい気分だった。
「杉野サンは何にするん」
「映画に来たらポップコーンですよ。キャラメルとバター醤油。あとチュロスですかね」
「飯ちゃうやん」
「どうせ動物の映画見ながらご飯なんて食べられませんよ。ちょっとづつ摘める方が絶対いいです」
「映画、好きなん?」
「好きですよ。家でもよく観てます」
「カウチポテトやもんなぁ」
「ちょっと」
じろりと睨むと、津川はククッと笑いを堪えた。
美帆は、なんだかんだ言いながらも自分が楽しんでいることに気が付いた。津川と映画なんて絶対楽しくないだろうと思ったが、案外そんなことはなかった。
思いのほか津川は気を使ってくれているし会話も弾む。本当に不思議なほど。
見たい映画は元々決めていなかった。美帆は基本的に何を見ても楽しめるので、滝川に合わせるつもりでいた。だから相手が変わっても困ることはない。
「私はなんでもいいですよ。津川さんの好きなものにしてください」
チケット販売機の前に立って、どれにしようかと話し合う。
「なんでもって、ホラーとかは嫌やろ?」
「ホラーでもいいですよ。私なんでもイケる方なので」
そう言われて、津川はさらに迷っているようだった。
この時間帯だと見れる映画はいくつかある。サスペンスの洋画か、子供向けのアニメか、動物系の感動モノか、邦画の恋愛モノ、ホラー。津川はアニメや恋愛は選ばないだろう。子供向けのアニメも見なさそうだ。動物も好きではなさそうだし、無難なサスペンスにすると思った。
「分かった。じゃあこれにしよ」
津川が指差したのは動物の映画だ。まさかそれを選ぶとは思わず、美帆は二度見した。
「えっこれ見るんですか」
「これやったら杉野サンも見れるやろ」
どうやら津川はいろいろ考えてくれたらしい。女性だからサスペンスは見ないと思ったのだろう。かといって恋人同士でもないのに恋愛ものを見るのは変だ。
津川と一緒に観る映画が動物系なんて、想像していなかった。だがあまり時間をかけらもいられない。美帆はそれにすることにした。
「津川さん、何か食べます?」
上映時間は二十分ほど後だった。待ってもいいが、小腹も空いているし何か買いたい。
「せやな。腹減ってるし」
「チケット代出してもらったので、こっちは私が持ちます」
「別に気にせんでええよ。大した額ちゃうし」
「そういうわけにはいきませんから。ほら、なんでも選んでください」
津川はなんだか居心地悪そうだ。それもそうかもしれない。津川は御曹司だから、人に奢られることなんてそうないだろう。そう思うと、なんとなくいい気分だった。
「杉野サンは何にするん」
「映画に来たらポップコーンですよ。キャラメルとバター醤油。あとチュロスですかね」
「飯ちゃうやん」
「どうせ動物の映画見ながらご飯なんて食べられませんよ。ちょっとづつ摘める方が絶対いいです」
「映画、好きなん?」
「好きですよ。家でもよく観てます」
「カウチポテトやもんなぁ」
「ちょっと」
じろりと睨むと、津川はククッと笑いを堪えた。
美帆は、なんだかんだ言いながらも自分が楽しんでいることに気が付いた。津川と映画なんて絶対楽しくないだろうと思ったが、案外そんなことはなかった。
思いのほか津川は気を使ってくれているし会話も弾む。本当に不思議なほど。