とある企業の恋愛事情 -受付嬢と清掃員の場合-
それから滝川のことが頭を離れなかった。
どうして滝川があの場所にいたのか。文也と親しいのか。二人の言葉に矛盾があるような気がしてならなかった。
だが、それを確かめる勇気はとてもじゃないが、ない。
ただでさえ文也は仕事が忙しそうなのに、これ以上余計なことを言いたくなかった。
それに滝川にも、わざわざ聞くのはなんだか気が引けた。
────あの二人、実は仲がいいとか? でも、そしたら私に嘘をついたことになる。
頭がぐちゃぐちゃだ。一体どういうことなのか、誰か教えてほしい。
一人で考えると頭がぐるぐるしそうだったので、話を聞いてくれそうな人────沙織にメッセージを送った。沙織ならきっと相談に乗ってくれるはずだ。
メッセージはすぐに返ってきた。お昼を一緒に食べよう、ということだった。その時に話そうということだろう。
美帆は時間を決めて社員食堂で待ち合わせをした。
社員達の休憩時間が終わるギリギリの時間を選んだからか、食堂にはあまり人がいない。おかげで気兼ねなく話すことができる。
美帆が席に着いて待っていると、沙織がやって来た。沙織は注文した食事を受け取ると美帆の隣に腰掛けた。
「ごめんね。突然」
「いいって。それで、突然どうしたの? 津川さんのこと?」
美帆は先日のことを大雑把に伝えた。そして以前滝川の代わりに文也がデートに来た時のこと、滝川とラーメンに行った時にした会話をなぜか文也が知っていたことを話した。
ただの勘違いかもしれない。二人の仲がいいのならそれはそれで構わない。
だが、なぜそれを自分に隠していたのか気になった。
話を聞くと、沙織は思案顔で唸った。
「うーん……、確かに変ね」
「でしょう?」
「私滝川さんとは全然喋ったことないんだけど、親戚……なんだっけ? 津川さんと」
「そうなの。けど、ほとんど関わりないって言ってた」
「でも、その割にやりとりがあるような感じがすると」
美帆は頷く。
「……気にするほどのことじゃないんじゃない? 仲良くしてるかもしれないのは気になるけど、別に悪いことじゃないんだし。一応二人って美帆を取り合ったわけだから、なんかあっても不思議じゃないって」
「……そうかな」
「そうよ。美帆もさ、二人が似てるから気になるのは分かるけど、あんまり滝川さんのことばかり考えてると津川さんにヤキモチ妬かれちゃうよ? 親戚とはいえ、津川さんは美帆と滝川さんがデートしてたこと知ってるんでしょ?」
「うん。そう────」
その時、美帆の頭にふとある考えがよぎった。
文也と滝川は遠い親戚で、関わりはないがお互いを知っている。そして二人はよく似ている。まるで双子かと思うほどよく似ている。
性格や服装は違うが、同じ格好をさせたら、恐らく見分けるのは難しい。
頭の中にありえない考えが浮かんだ。今までたったの一度も、思いつきもしなかったことだ。
なぜこんな簡単なことを思い付かなかったのだろうか。二人の印象はかけ離れていた。だからだ。だから、二人を結びつけることが出来なかった。
そして、二人の態度は完璧に違った。だから全く別の人間だと思った。
よく考えればおかしなことなのに。
────本当に? ううん、勘違いかもしれない。きっとドラマの見過ぎだよね。こんなことあり得ない。
望んでいた真実に近づいたはずなのに、なぜか余計なことを知ってしまった気分になった。そのせいで何か大きなものを失うような、そんな気がした。
どうして滝川があの場所にいたのか。文也と親しいのか。二人の言葉に矛盾があるような気がしてならなかった。
だが、それを確かめる勇気はとてもじゃないが、ない。
ただでさえ文也は仕事が忙しそうなのに、これ以上余計なことを言いたくなかった。
それに滝川にも、わざわざ聞くのはなんだか気が引けた。
────あの二人、実は仲がいいとか? でも、そしたら私に嘘をついたことになる。
頭がぐちゃぐちゃだ。一体どういうことなのか、誰か教えてほしい。
一人で考えると頭がぐるぐるしそうだったので、話を聞いてくれそうな人────沙織にメッセージを送った。沙織ならきっと相談に乗ってくれるはずだ。
メッセージはすぐに返ってきた。お昼を一緒に食べよう、ということだった。その時に話そうということだろう。
美帆は時間を決めて社員食堂で待ち合わせをした。
社員達の休憩時間が終わるギリギリの時間を選んだからか、食堂にはあまり人がいない。おかげで気兼ねなく話すことができる。
美帆が席に着いて待っていると、沙織がやって来た。沙織は注文した食事を受け取ると美帆の隣に腰掛けた。
「ごめんね。突然」
「いいって。それで、突然どうしたの? 津川さんのこと?」
美帆は先日のことを大雑把に伝えた。そして以前滝川の代わりに文也がデートに来た時のこと、滝川とラーメンに行った時にした会話をなぜか文也が知っていたことを話した。
ただの勘違いかもしれない。二人の仲がいいのならそれはそれで構わない。
だが、なぜそれを自分に隠していたのか気になった。
話を聞くと、沙織は思案顔で唸った。
「うーん……、確かに変ね」
「でしょう?」
「私滝川さんとは全然喋ったことないんだけど、親戚……なんだっけ? 津川さんと」
「そうなの。けど、ほとんど関わりないって言ってた」
「でも、その割にやりとりがあるような感じがすると」
美帆は頷く。
「……気にするほどのことじゃないんじゃない? 仲良くしてるかもしれないのは気になるけど、別に悪いことじゃないんだし。一応二人って美帆を取り合ったわけだから、なんかあっても不思議じゃないって」
「……そうかな」
「そうよ。美帆もさ、二人が似てるから気になるのは分かるけど、あんまり滝川さんのことばかり考えてると津川さんにヤキモチ妬かれちゃうよ? 親戚とはいえ、津川さんは美帆と滝川さんがデートしてたこと知ってるんでしょ?」
「うん。そう────」
その時、美帆の頭にふとある考えがよぎった。
文也と滝川は遠い親戚で、関わりはないがお互いを知っている。そして二人はよく似ている。まるで双子かと思うほどよく似ている。
性格や服装は違うが、同じ格好をさせたら、恐らく見分けるのは難しい。
頭の中にありえない考えが浮かんだ。今までたったの一度も、思いつきもしなかったことだ。
なぜこんな簡単なことを思い付かなかったのだろうか。二人の印象はかけ離れていた。だからだ。だから、二人を結びつけることが出来なかった。
そして、二人の態度は完璧に違った。だから全く別の人間だと思った。
よく考えればおかしなことなのに。
────本当に? ううん、勘違いかもしれない。きっとドラマの見過ぎだよね。こんなことあり得ない。
望んでいた真実に近づいたはずなのに、なぜか余計なことを知ってしまった気分になった。そのせいで何か大きなものを失うような、そんな気がした。