とある企業の恋愛事情 -受付嬢と清掃員の場合-
「デートどうだった?」
週明け、ロッカーで顔を合わせた沙織が尋ねてきた。
美帆はまたあの関西弁男を思い出してげんなりした。
「……うん、いい人だった」
「にしては微妙な顔ね」
「ちょっと色々あって」
「色々って?」
美帆は沙織に一連の出来事を説明した。思い出すとまたムカっ腹が立ってくる。
「ふうん、そんな人がいたんだ」
「すっごく失礼な人だった。せっかく気分よく喋ってたのに台無しよ」
「でもさでもさ、声かけてきたってことは、その人美帆に気があったんじゃない?」
「まさか。いきなりあんな失礼なこと言ってきた人が? ありえないよ。小学生の男の子じゃあるまいし」
「新手のナンパかも」
そんなわけがない。明らかに嫌味たっぷりだった。「男漁り」など普通の神経をした人間は言わない。
────もしかしてあの人も私のことガツガツした女だと思ってた?
なんだか一気に自信を無くした。中村とのやりとりは続いているが、お互い特別気に入った感じではない。多分、また《《お友達》》で終わるような気がする。
美帆は着替え終わるとミーティングのために一階の総合受付に向かった。いつものように清掃員に朝の挨拶をしたところで、ハッとした。
あの男性清掃員の顔が、なんだか先日見た男の顔に似ているように見えたのだ。あの時は全く気が付かなかったが、よく似ている。美帆は男の顔を凝視した。
まさか、あの時の男があの清掃員なのだろうか。グレーのキャップのせいでよく見えない。
「おはようございます」
男は爽やかな笑顔で挨拶を返した。やはり、よく似ていた。しかしあまりにも態度が違う。
────そんなわけないよね。あの人スーツ着てたし、この人とは無関係に決まってる。
美帆はついでに男性の胸元にかけられている名札を見た。『滝川』と書かれている。
滝川はすでに仕事を始めていた。
美帆も切り替えて仕事に集中することにした。だが、なんだかまだ滝川のことが気になった。いや、滝川に似たあの男が。だろうか。
一緒に食事した中村より、なぜあんな男の方が印象に残るのか不思議だった。
週明け、ロッカーで顔を合わせた沙織が尋ねてきた。
美帆はまたあの関西弁男を思い出してげんなりした。
「……うん、いい人だった」
「にしては微妙な顔ね」
「ちょっと色々あって」
「色々って?」
美帆は沙織に一連の出来事を説明した。思い出すとまたムカっ腹が立ってくる。
「ふうん、そんな人がいたんだ」
「すっごく失礼な人だった。せっかく気分よく喋ってたのに台無しよ」
「でもさでもさ、声かけてきたってことは、その人美帆に気があったんじゃない?」
「まさか。いきなりあんな失礼なこと言ってきた人が? ありえないよ。小学生の男の子じゃあるまいし」
「新手のナンパかも」
そんなわけがない。明らかに嫌味たっぷりだった。「男漁り」など普通の神経をした人間は言わない。
────もしかしてあの人も私のことガツガツした女だと思ってた?
なんだか一気に自信を無くした。中村とのやりとりは続いているが、お互い特別気に入った感じではない。多分、また《《お友達》》で終わるような気がする。
美帆は着替え終わるとミーティングのために一階の総合受付に向かった。いつものように清掃員に朝の挨拶をしたところで、ハッとした。
あの男性清掃員の顔が、なんだか先日見た男の顔に似ているように見えたのだ。あの時は全く気が付かなかったが、よく似ている。美帆は男の顔を凝視した。
まさか、あの時の男があの清掃員なのだろうか。グレーのキャップのせいでよく見えない。
「おはようございます」
男は爽やかな笑顔で挨拶を返した。やはり、よく似ていた。しかしあまりにも態度が違う。
────そんなわけないよね。あの人スーツ着てたし、この人とは無関係に決まってる。
美帆はついでに男性の胸元にかけられている名札を見た。『滝川』と書かれている。
滝川はすでに仕事を始めていた。
美帆も切り替えて仕事に集中することにした。だが、なんだかまだ滝川のことが気になった。いや、滝川に似たあの男が。だろうか。
一緒に食事した中村より、なぜあんな男の方が印象に残るのか不思議だった。