貴女と世界を壊したい
そんなことを考えていたら、知らず知らずに笑みが漏れていたのか、千紘が不思議そうに首をかしげる。
「ごめん、なんでもない。大学生になったんだなって思っただけ。」
「え〜なに急に。……でも、分かるかも」
ちょっと感傷に浸ってた私の思いをちゃんと汲んでくれたのか、千紘は優しい目をして微笑んで……
「で?佳奈は何か大学生らしいこと、できたの??」
急にぶっ込んできた。
「話の流れ的にそうなりますよねぇ…。
うーん」
この前のサークルのこと、話してもいいけど、話してもなぁ…って気もする。
だって、冷静に考えたら全然たいした内容じゃないんだもん。
すごくバスケが上手な子がいて、その子があまりにも綺麗だったから、目が合った時ちょっと緊張しただけ。
大きな瞳、サラサラの黒髪、メイクで誤魔化していない本物の美人………すごく、“私のなりたい女の子”って感じの子だった。…だから一瞬で目が離せなくなって、それで、怖くなって帰ってきたなんて。
そんなこと話しても何にもならないし、下手したら引かれるし。
「……なんか、緊張してあんまり何もできなかった」
「そうなの?まぁ初回だしね〜。
また行くんでしょ?佳奈も素敵な先輩見つかったら教えてね!」
そしてあわよくば紹介して、なんてニカッと笑う千紘に笑って軽口を返す。
…そんなやり取りをしながら、私は心の中で全然別な誓いを立てていた。
今日こそは、あの子に話しかけること。