貴女と世界を壊したい
橋本 佳奈
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世界的な感染症が出現してから3年目になろうとしている4月。
私は、都内の大学に入学した。
過酷な受験勉強を経て合格したその大学は、中高ずっと女子校だった私にとって、長年見続けた夢と憧れの塊だった。
構内のスタバ。タイプ音の鳴り響く授業。同じ学科でたまに顔を合わせる人。中庭でダンスの練習をする人たち。眠くなる声で話す教授。イマドキの格好の男の人。安くも美味しくもないけど何故か行きたくなる食堂。廊下を歩く集団が交わす英会話。
「なんかさ、大学生って感じだよね!」
「佳奈、それほんとに毎日言ってない?」
お昼を過ぎた構内のカフェはそこまで人が多くなくて、私たちはケーキを頬張りながら、机にパソコンと参考書を広げて課題をやっていた。
向かい側で呆れた顔をしているのは、高校同期で同じ大学に進学した、藤本千紘[フジモト チヒロ]だ。
ずっと憧れてたもんね、とサラサラのボブヘアを揺らしながらクスクスと笑う千紘は、大学生になってますます綺麗になった気がする。
元々すごく整った顔だったけれど、メイクをした顔は新鮮で、やっぱり大人っぽいなと何度見つめても思う。