あふれるほどの愛と涙を、キミに。
学校から帰る時。
道端で、ハーネスをつけたクリーム色の大きな犬と一緒にいる、おばさんの姿を見つけた。
「あっ、三浦(みうら)さん。こんにちは」
「あらあ、その声は蕾ちゃん?」
「はい! ラブちゃんもこんにちは」
近所の三浦 秋美(みうら あきみ)さんは、目が不自由だけどとても優しいおばさん。
けれど、本当に目の方はひどいみたいなので盲導犬であるラブラドールレトリバーのラブちゃんと一緒だ。
盲導犬かぁ……。
盲導犬みたいに、トゥレット障害といった精神疾患を持つ人を支える犬がいればいいのに。
……いや、そんなのは無理か。
視覚障害者と比べたら、わたしのトゥレット障害は見ただけでは全然分からないし。
視覚障害の人は、もしも盲導犬がいなかったら事故に遭うリスクだって高くなってしまうけれど、わたしは違う。
そもそも、視覚障害者が全員盲導犬を連れてるわけじゃないので、もし精神疾患を持つ人を支える犬がいたとしても、わたしは無理だろう。
なぜかというと、うちはお母さんは昼でも仕事で忙しくて平日はわたしが学校から帰ってくるまで誰もいないし、お父さんは重度の犬アレルギーなので、犬なんてとても飼える環境じゃない。