あふれるほどの愛と涙を、キミに。
「なあ、岡崎」
お昼ご飯を食べ終えた時のこと。
「え、あ、ああ、恋木くん……」
「これさ、お前の?」
恋木くんが持っていたのは、レースの縁取りをされたハンカチだった。
今朝、支度をしていた時に洗面所のところでわたしがポケットに入れたハンカチと、デザインが一致している。
「ありがとうっ」
受け取る際に、わたしの手が不自然にガクッと動いた。
最悪だ。こうやって優しい人に落とし物を拾ってもらって、こういう時にまでチックが出てしまうだなんて。
「えと……」
恋木くんは、何ひとつ変な顔をしていない。
わたしのチックに、まるで気がついていないみたいに。
優しい恋木くんのことだから、きっと知らないふりをしてくれているんだろうな。
「ほ、本当に! ありがとう」
わたしは、思わず深く頭を下げた。
ありがとう。ハンカチを拾ってくれたことだけじゃなくて、チックに関しても気を遣ってくれて、本当にありがとう。
「そんな丁寧な礼はいいよ」
恋木くんは、くすくすと笑っていたけれどそれでもわたしは心の中で「ありがとう」と言いたい気持ちが消えなかった。